受注制作のお話
受注制作(オーダーメイド)の依頼を受けて、2023年5月から6 月にかけて、油彩画を描いていました。 次の画像がその絵画作品です。 作品名:horizontal flow #** サイズ:W602mm*H800mm*D30mm 今回は作品についてのお話ではなく、依頼を受けて作品を制作させていただいたことのお話です。 受注制作は依頼を受け、何点かの作品を納めさせていただいたことがあります。 私は普段から奔放な心緒で作品と向き合っており、そのような作品をご覧いただく機会があって依頼をいただけるということは、画家冥利に尽きる大変ありがたいことでした。 その反面、受注制作はご要望と自身の表現のバランスを保たないといけない点もあり、絵筆を進めるにあたりやや窮屈さを感じていたことが思い出されます。 それは、私自身の描く作品である一方で、自身の作品を客観視しながら絵筆を進めるという距離感を保つことの難しさです。 私にとって、表現活動においての作品とは、言語的な表現に類似していると考えています。 言語は人と人の間に生まれ交流をもたらすものであり、作品を鑑賞することは母語や生まれ育った環境などの境界を越えて共有できる特別な交流体験です。 依頼を受けて作品制作をするということは、作者の言語感を一部削ぎ落として表現を完結させることであるとも実感しました。 その経験は私自身にも様々な気付きがあり、機会があればまた望んでみたいと思える良い経験だったのですが、その一方で依頼の要望を重視しすぎると職人的な手仕事で作品制作をしかねないこととも隣り合わせでした。 私にとっての表現活動の理想は、作者の表現意図の純度をある程度保ちつつ、鑑賞者の心緒に触れることのできるものを目指しています。 それができれば苦労はしないのですが、遠い場所にそれがあることを思い描いて、これからも絵筆を進めていこうと思います。